#019
Passiflora
2026.05.15 Release
ある人は星と 呼んだこの花
ある人は蓮と 抱いたこの花
Some called this flower a star
Some held it as a lotus
Botanical Notes
トケイソウ
Passiflora
花言葉:聖なる愛・信仰
蔓を伸ばして他の植物に巻きつきながら育つ、熱帯〜亜熱帯原産のつる性植物の総称。中央には三つに枝分かれした柱頭が、その下には五本のおしべと、糸のように細かく裂けた副花冠が同心円状に並びます。そのかたちが時計の文字盤や針に見えることから、和名は「時計草」と名付けられました。
英名 passion flower、学名 Passiflora は「受難の花」を意味します。三本の柱頭はキリストを打ちつけた三本の釘、糸状の副花冠は茨の冠、五本のおしべは五つの傷、十枚の花被は十人の使徒 — 大航海時代に南米でこの花を見た宣教師たちが、構造のすべてを受難物語の記号として読みました。一つの花が、見る人によって、星にも、蓮にも、時計にも、祈りにもなる花です。
ほとんどの種は朝に開いて夕方には閉じる「一日花」。けれど同じ株から、明日もまた、別の花が新しくひらいていきます。
Liner Notes
「ひとつのものに、いくつもの名前があっていい」というテーマで書いた一曲です。トケイソウは、見る人の文化や信仰によって、星座とも、蓮華とも、時計とも、受難の花とも呼ばれてきました。どれが正解ということはなくて、呼ぶ人ごとに、その花の意味が増えていく。
サビで「ある人は星と 呼んだこの花 / ある人は蓮と 抱いたこの花」と並べました。一つの花のうえに、誰かのまなざしと声が重ねられていく。ブリッジではあなたの呼びかけそのものが風になって、いらないものなんて、この世にないよを運んできます。
一日でとじる花だけれど、明日は別の花が、別のあなたの声で、また新しくひらく。短い時間を惜しむのではなく、毎朝、別のわたしが咲くのだという継承の構造をうたいたかったうたです。
歌詞
三つの針が しずかに揺れて
十の花びら 朝を抱えた
あなたが知らない 庭のすみで
わたしは いくつもの 名前を着る
あなたの ためいきも わらいごえも
同じ針で 揺れている
ひらいて 数えて 閉じてゆく
ある人は星と 呼んだこの花
ある人は蓮と 抱いたこの花
わたしは ここで ねむるように
日が傾けば 花は折りたたまれ
名前だけが 風に残される
あなたを 待たずに しずかに とじる
昨日の続きを 明日が ひらく
あなたが 短いと 言った時間に
別のわたしが つづいてゆく
だれが呼ぶ 名前で 咲こうか
ある人は祈りと 数えたこの花
ある人は時計と 名付けたこの花
あなたの中で わたしは ひらく
あなたの呼びかけが 風を運んで
いらないものなんて この世にないよ
ひとつの花に いくつもの重さ
ある人は香りと 呼んだこの花
ある人は果実と 名付けたこの花
あなたの声で わたしは咲く
朝が来る
別のわたしが ひらく
別の名前で
